システム開発費用の算出、「高い・安い」の判断基準や相場 ~失敗しないシステム開発の外注・発注~
システムの開発費用や相場について
システム開発にはホームページ(ECサイト)、業務システム、WEBサービス・スマホアプリといったものがあります。そして、その費用は十数万~数億・数十億と様々です。
そのため、
「WEBサービスを作りたい」
「業務効率化のために社内業務システムを作りたい」
けど、
「どのシステム会社が良いか分からない」
「見積りの妥当性が分からない」
といったケースがあると思います。
そこで、現役SEから見たシステム開発を検討する場合のリスクや注意点、システム開発費用の判断基準や相場の考え方、そして「失敗しないシステム開発の外注・発注」をご説明します。
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システム開発の費用感 ~どういった情報があれば正しいシステム開発費用(概算)が算出できるか~
冒頭で述べた通り、システムの種類やシステムの規模によって、システムの開発費用はピンからキリまであります。
ただ、「システム」は家などの目に見えるものと違い、システムを作る工程(=工数)や裏側(=プログラム)が目に見えないため、費用感・相場感が非常に見えづらい・分かりづらいものとなっています。
システムの開発費用はどうやって決まる?
システム開発は家の建築とイメージ的には近いです。
「こういったシステムがほしいんだけどいくら?」
と、ざっくりとした相談を受けることがありますが、こういった相談を家の建築の例で置き換えると
「こういった家がほしんいだけどいくら?」
ということだけを言われた場合に近いです。
家の価格は「土地の場所(東京の一等地なのか地方の田舎なのか)、土地の大きさ(坪数)、家の大きさ(何坪で何階建て)、家の材料(木材?鉄筋?)、家のデザイン、内装(キッチンや風呂・トイレ)、etc」の条件によって変動しますが、システムの開発も同様にその条件によって大きく変動します。
そのため、「どういった種類で、どのくらいの規模で、どういった機能で」といった条件(具体性)が不明瞭な場合は、システムの開発費用を算出することが難しくなります。逆に、これらの条件がある程度分かれば、システム開発費用を算出し、それが相場と比べて高い・安いといったことも提示することはできます。
(ただ、ざっくりとした相談であったとしても、極力、目的や意図を汲んで機能・規模別に概算費用(ある程度幅を持たせて)を出すようにしていますが。)
システムの開発費用(概算費)をざっくり算出・提示するのに必要な情報
- システムの概要
- オリジナルのEC(ショッピング)サイト
- システムの種類
-
- WEBサイト(PCで見る)
- スマホ
※スマホの場合は、単純にスマホといっても更に「スマホアプリ?スマホサイト(WEB)?」と細分化されていきますが、おそらくどちらかと聞かれると思います。(また優秀なシステムエンジニアの場合はその違いやメリット・デメリット含めて説明してくれます。)
- どのくらいの規模
-
はじめの1年くらいは利用者1000人の見込み。
※規模に関しては、利用者が1000人といっても、その人たちが毎日使うのか?週に1回程度?など、利用度(率)によって更に変わってきますが、優秀なシステムエンジニアの場合はきちんとヒアリングしてくれます。
- どういった機能
-
- 会員登録(ログイン)
- ショッピングカート
- メルマガ(会員登録している人へ)
上記以外にも
- 目的・目標
- ビジネスモデル
- ターゲット層
- 対象デバイス・対象ブラウザ
などなど、細かく分かれば分かるほど良いです。
ざっくりとしたシステム開発の概算費用が欲しい場合であったとしても、できる限り上記の情報をシステムエンジニアに提示すると話がスムーズに進むと思います。
これらが分かってくると、システムエンジニア側では作るシステムのイメージ(=作るのに掛かる時間=費用)が湧いてきて、「その場合なら、ざっくり○○万円くらいかな?相場的にも□□だと思います。」といった話ができるようになります。
(ただ、優秀なシステムエンジニアの場合は、営業・企画などからのざっくりとした相談であったとしても、そのシステムの目的・意図を汲み取り、上記の情報を引き出すように聞いてくれます。)
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システム開発の相場感 ~何をもってシステムの開発費用が高い・安いというか~
費用対効果で考えよう
システムに限った話ではないが、単純にシステムの開発費用が高い・安いだけでシステムの発注を検討することは、あまり本質的ではありません。
システムの開発費用だけを基準に考えてシステムの発注をしてしまい、痛い目を会った人を何度も見てきました。
当たり前のことを言いますが、注目すべき最低限のポイントは、システムの開発に掛かった費用以上にリターン(利益:売上向上か経費削減)があるかということ。
すなわち「費用対効果」で判断をすべきということ。
- あるシステムXを1000万で開発(初期投資)したとしても、その効果により1200万円の売上があがる場合、200万円の黒字(利益)となる。
- 逆に、あるシステムYを5万円で開発(初期投資)したとしても、その効果による売上が3万円の場合、2万円の赤字となる。
システム開発費用の単純な金額(絶対値)でみれば、もちろん5万円より1000万円の方が高いですが、このケースの場合、まず②を選択する人はいないと思います。
ほとんどの人は①を選択するかと思います。(1000万円というお金さえ準備できた前提になりますが。)
システム開発会社(業者)の選定基準・方法
同じシステムを開発する場合であったとしても、依頼先の業者(システム開発会社)によって、提示される費用にはもちろん差があります。
たとえば、相場が1000万円と見込まれるシステムZを作りたいとします。
そして、そのシステムZに対してA社・B社・C社が以下の提案(見積もり)をしてきたとします。
・A社は800万円
・B社は1000万円
・C社は1200万円
どれが良いと思いますか?
同じものを作ってくれるのなら、安いA社が良いのでは?
・・と安直に選んでしまってはとても危険です。
安い場合には安いなりの理由が、高い場合には高いなりの理由があるため、その理由を紐解いていく必要があります。
安い場合に考えられる注意点
- 「品質」悪化のリスク
-
作ってほしいシステムの要件(技術難易度、工数)を理解・把握できていない。
そのため、正確な金額を見積もれておらず、本来掛かるべき費用以下の金額で見積もりを提示してしまっている。システムを開発している途中で想定できていなかったことに気付き、手抜き工事で進められてしまう可能性がある。
(家の建築で例えると欠陥住宅のイメージに近いです。見た目はきちんとできていそうでも、蓋を開いてみたら、見えないところがボロボロ、いつ倒壊するかも分からないといった感じです。コスト削減のために、本来は丈夫な板を使わないといけないところ、薄くてやぶれ安い薄い板を使ったり、釘も10本打たないといけないところを2本くらいで終わらせるなど。) - 「納期」遅延のリスク
- 上記と同じ問題が発生したことにより、指定した納期に納品できない可能性がある。
- 追加「費用」発生のリスク
- 上記と同じ問題が発生したことにより、当初想定できていなかった分に関して追加の費用を後で求められることがある。(結局、システムの開発費用が高くつく)
すなわち、「安かろう悪かろう」の可能性があると考えてください。
高い場合に考えられる注意点
まず相手(システム会社)も企業なので、利益を確保できるように原価(人件費)や利益分を考慮してシステムの開発費用を見積もります。ただ、それ自体は、ビジネスをしているので特には問題はない(当たり前のこと)と思います。
ここで、どういった場合が問題もしくはポイントになるかというと、以下のような場合が考えられます。
- その金額は相場的に妥当な金額か
- そして、その金額に見合ったスキルを持っているのか
- また、無駄な機能が入っていないか(その無駄な機能のせいで高くなっていないか)
- (逆に発注者が見落としていた)機能を「良い意味で」追加で提案をしてくれているか
特に見落としがちなのが2.と4.でしょうか。
- 金額に見合ったスキルを持っているのか
- 相場的には妥当な金額であったとしても、そのシステムAを実現できる人がその会社にいるかどうかは別の話。
- 発注者が見落としていた機能を「良い意味で」追加で提案をしてくれているか
- たとえば、上記例で書いたように1000万円の開発費用で1200万円の売上が見込めるシステムがあったとします。しかし、そこには発注者が見落としていた機能α(200万円)があり、その機能αを追加した場合、システムの開発費用は1200万円になりますが、1450万円の売上が見込める場合、利益は更に増えます。こういった提案を行うためには、システム会社の技術スキルもさることながら、お客様のビジネスのことをよく調べ・よく考える必要があります。そのため、そういったシステム会社は「ただの外注先(業者さん)」ではなく、あなた(発注者)にとって「パートナー」となる可能性を秘めたシステム会社になりえます。
もちろん、
- スキルがあって安心なのに、安く提案してくれるシステム会社もあれば、
- 逆に、スキルが無いのに、高く提案してくるシステム会社もあれば、
- A社・B社ともスキル(品質・納期)は同じだが、単純にB社の方が単価が高いから費用が高いだけ
ということもあります。
総合的な判断が必要
そのため、発注するシステム会社を判断する場合は、総合的な評価をして判断する必要があります。
「費用」×「スキル(品質・納期)」=「総合評価」
ただし、もう一つ忘れてはいけないことは、冒頭でも書きましたが、お金を掛けて作ったシステムが掛けた開発費用以上にリターン(売上向上もしくは経費削減)があるかということ。
『「費用」×「スキル(品質・納期)」 < それ以上のリターン 』=「総合評価」
これらを踏まえて、システムの開発費用が高いか・安いか、発注するべきか・発注しないべきかを考えた方が良いかと思います。
※もちろん、地域貢献用サービス(システム) などのように、開発するシステムによっては、単純に売上向上や経費削減は度外視で作る場合もあると思います。
改めて、システム開発に関する判断基準に関して
上記で書いてきたような内容はシステムに限った話ではないと思いますが、ただ、システム開発の場合は家の建築などと違って目に見えない部分も多いと思います。
そのため、一般の方から見ると上記で書いたような判断材料(注意点)自体が結局分からないとなるかと思います。(また、システム開発の費用感(相場)も分かりづらい)
では、一般の方の場合、どうやってシステム会社の良し悪しを判断すれば良いでしょうか?
それは、あなたが今からお願いしようとしているシステム会社(もしくはシステムエンジニア)が、開発に掛かる費用以上の価値をあなた(お客様)に提供しようとしているか、もしくは、そこまで含めて考え・提案して・実行しようとしているかで見てみると良いかもしれません。
「予算が30万円と伝えたら、とりあえず30万円以内で作れるものを作ってくれた。」
果たして本当にそれで良いのでしょうか?
30万円掛けて作ったものは、30万円以上のリターンがあるのでしょうか?
単に予算を伝えて、作りたいもの言って、それっぽく作ってくれるシステム会社は世の中にごまんといます。
しかし、お客様の利益まで考えてくれるシステム会社(システムエンジニア)となると、その数はグッと減ります。
例えば、予算が1000万円あり、何も言わなければそのまま1000万円で受注できたかもしれないケースであったとしても、本当にお客様の利益(価値)のことを考えてくれる優秀なシステム会社(システムエンジニア)の場合、
「ここの機能は削りましょう。この機能は作る手間は掛かりますが、それに見合った効果は○○の理由で望めません。そのため、この機能を削れば2週間早く仕上がりますし、その分、費用も△△万円ほど安くなりますが、いかがでしょうか?」
場合によっては、
「○○の理由で、お客様がおっしゃっているシステムそのままのモノを作ってもムダ金に終わる可能性があります、この目的のためであれば、全く違った形に見えますが、こういった形のものを作った方が良いと思います。この場合であれば費用は△△万円になりそうですが、いかがでしょうか?」
など、提言してくれます。
そういったプロ魂のあるシステム会社(システムエンジニア)とお会いすることができたのであれば、それは基本的にお付き合い=発注した方が良い可能性が高いかと思います。
システム開発を検討している方にとって当記事が少しでも参考になって頂けましたら幸いでございます m(_ _)m