待機児童問題と保育園不足問題 ~その1:本質的な問題は何か~
待機児童問題の実態 ~本質的な問題は何か~
昨今、待機児童問題とともに保育園と保育士の不足している現状に注目が集まっています。
国の政策、地方の政策、企業の制作等様々な取り組みが行われていますが、なかなか待機児童の解消には至っていないのが現状です。
保育を取り巻く環境の現状の根本的な原因と本質的な問題の解決策について考えてみたいと思います。
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保育園の数は増えているのか?
国は待機児童問題の解決に向けて企業園に認可や認可園の増設といった政策を行っています。
これは根本的な原因の解決に繋がっているのでしょうか。
厚生労働省発表の「保育所等関連状況取りまとめ」の保育所等利用児童数等の状況資料では保育園の数自体は平成20年22,090か所から平成27年28,783か所と1.25倍増加し、定員も212万人から253万人と約1.2倍増加しています。
※平成27年からは保育所に加え幼稚園型認定こども園、幼保連携型認定こども園、特定地域型保育事業を含みます。
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保育園の数は増えているのに、なぜ待機児童が減らないのか
上記データからも分かるように保育園の数は増加しています。ただし、待機児童解消には至っていません。
なぜ、待機児童解消には至らないのでしょうか。そこには需要(待機児童数)と供給(保育園数)のバランスが取れていない現状がありました。
地域ごとの需要(待機児童)と供給(保育園)のバランスの相違
同資料内、保育所等の定員数及び利用児童数の推移資料では、常に定員より利用児童数が下回っていますが、実際には待機児童が多くいます。
これは単純に保育所や保育所の定員を増やすだけでは根本的な原因の解決には繋がらないと言えるでしょう。
全国の待機児童数と保育園数を単純に合計して比較すれば確かに待機児童数の方が少ないのですが、都道府県別の全国待機児童マップからも分かるように地域別で見ると、首都圏を含む一定の地域に需要が高く、供給とのバランスが取れていない(すなわち、首都圏などの地域で見ると待機児童数>保育園数)であることが分かります。
予期していなかった待機児童が顕在化 ~潜在的待機児童問題~
待機児童として目に見えていたのは、すでに働こうとして保育園の申し込みを行った人の内、保育園に入ることができなかった人が表面化した数字です。
つまり、今後働きたいと思っているもしくは、待機児童の多いと言われる地域で最初から保育園に入れないからと働くことをと諦めていた人は待機児童数として表れていなかったのです。(これらを「潜在的待機児童(数)」といいます。)
これらも待機児童が増えている原因となっています。
平成27年4月の待機児童は23,167人、同年10月には45,315人という数字が出ていますが、潜在的需要を含めると更に多いと言われています。
そのため、ここ数年、潜在的待機児童を待機児童として数に含めたために非常に待機児童数が増える原因となった自治体もあります。
現在、この潜在的需要が表面に表れつつあり、保育園が増加していますが、それに伴い待機児童も増加しているため、「一向に待機児童問題が解消されていない=保育園が増えていないのではないか?」と表面的に見えてしまう部分もあります。
※なお、ここで待機児童問題による保育所不足を指摘している対象は認可保育所です。(無認可保育所は沢山ありますが、保育料が高くなります。)
女性が活躍する社会という流れから、今まで子育てと専業主婦をしていた人が社会に目を向けることで、予期していなかった待機児童が顕在化してきているのです。
潜在的待機児童も含めた待機児童問題を解決するためには
顕在潜在合わせた待機児童問題を解決するためには、結局のところ保育所を増やす必要はあります。
(大きな解決策の1つとして)
そのため、よくニュースで見聞きすると思いますが、国は地域ごとの状況(需要と供給)に応じて保育園を更に増やそうとしており、そのために規制緩和(民間企業が保育園を立てて運営する許可)や資金投入(保育園建設への補助金)を試みています。
しかし、ここに来て、保育園の数を増やすにあたり、大きな障壁が立ちはだかるようになってきました。
その障壁というのは保育士不足問題です。
保育園を増やすために、どれだけ規制を緩和しても、どれだけ補助金を出しても、保育園で働いてくれる保育士がいないと新たに保育園を立てて増やすことはできません。
保育所を開設するためには周辺地域の問題もありますが、現在、待機児童が増加する原因で最も重要な問題は保育士の確保ではないでしょうか。
保育士不足の裏側 〜保育士はどれだけ足りないか〜
では、保育園を増やすためには保育士を増やす必要があります。
ただ、「保育士を増やす」ということに関して見逃してはいけない観点があります。
そもそも、すべての待機児童を補うために必要な保育園を立てるために必要な保育士資格を持つ人の数自体は実はそこまで不足していないと言われています。
というのも、「保育士資格を持っているが保育士として働いていない人」が全体の半数以上いると言われています。
そのため、保育士不足の根本的な原因と本質的な問題は、保育士資格を持っている人の内、実際に保育士として働く人が3〜4割しかいないということであり、そして、なぜ(全員が全員ではではないと思いますが)保育士になりたくて保育士資格をとったのに「保育士にならないのか」もしくは「なったけど保育士をやめてしまうのか」という点だと思います。
その根本的な原因を考えた上での解決策を打ち出すことが重要です。
この続きは「待機児童問題と保育園不足問題 ~その2:【保育士の給与】根本的な原因と解決策~」にて。