組織力・チームワーク力の向上 ~任せること~
任せることとは
社員の当事者意識・主体性の育成を考えるにあたり、日経ビジネスの以下の記事が非常に参考になりました。
部下の独り立ちに「DOはご法度」 ~顧客も部下も、僕の顔しか見なくなった~
魚を捕ってあげれば、子供を1日食べさせることができる。しかし、魚の捕り方を教えてあげれば、子供は一生食べて行くことができる。
- おそらくそのシチュエーションで上司が僕を助けるなど、いともたやすいことであっただろう。そして、僕を突き放すことこそが、一番リスクがあり、勇気が必要だったのだ。
- しかし、上司はそれでも僕が「独り立ちする」ことを選んだ。僕の成長を優先してくれたのだ。
- 「任せること」で部下の急激な成長という果実を手に入れることができたのである。
大ピンチに顔をそらした上司の真意 ~「任せること」は危うく、そして素晴らしい~
冷や汗を流しながら必死に背伸びをして取り組んだ。その結果、僕の背丈は本当に伸びた。
引用-日経ビジネス
これらの記事を読んで分かる共通のキーワードは「任せること」であり、「任せること」が「人の成長=人材育成」につながるということが分かります。
※ただし、「任せる」=「放置・放任」としないこと。
こういった類の記事(情報)は良く目にしますが、それは、各現場において「任せる」ことができないケースが多いということなんでしょうね。
では、それはなぜなのか・・
自分の見解ですが、
- (正しいやり方で)「任せる」ことは(始めは)「自分がやること以上に労力が必要で、責任が必要で、信頼信用が必要」だから。
-
そして、これを上司が正しくできなければ、上司にとって「任せる」ことはただの「大きなリスク」になるから。
(もしくは単に任せた際の部下の失敗=責任を自分が取りたくないというものあるとは思いますが。)
かと。
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仕事の任せ方
まず、任せるということを行うにあたりポイントとなることは何だろうか?
以下に、自分なりに「任せ方」について考え、実行していることを3点挙げさせていただきます。
①失敗できる環境(風土・社風・文化)を作ること
まず土台として、これを作っておくことが重要。失敗して咎められる環境であれば、当たり前だが誰も手を上げない。
いきなり組織(会社)全体として難しければ、プロジェクト単位やチーム単位でもいい。小さくても良いので、そういった場を作ること。
そして、部下に「この領域は何があっても自分が責任をとるから大丈夫。やってみな。」と伝えてあげること。
「失敗を恐れてチャレンジしない人を咎め、失敗してもチャレンジする人を称賛する」環境を作っていくこと。
むしろ、これが上司として一番のすべき仕事ではないだろうか。
(また、任せる機会を作っていくことも上司の大切な仕事)
ただし、「失敗」の定義は必要。何度も同じ失敗をするというのは意味が違う。
(更に言えば、チャレンジによる失敗では無く、既存ルーチンでの失敗となれば話は別物)
あくまで、新しいことに初めてチャレンジした時の「失敗」といったことが重要。
(ただし、別の方法を試した結果として同じ失敗となる場合はもちろん別)
②本人が「任せられた」と思うこと
次に大切なのは、任せようとしている人自身が「任せられた」と思うこと。
まずはそこからのスタート。
その業務に必要なスキル・ノウハウを教えるは二の次。
そして、そのために必要なことは、まずは「任せる」というのをストレートに伝えてみること。
日本人は基本真面目なので、ほとんどの人(部下)の場合は「全てを任せる」と伝えれば、「任せられた」という意識を持つことができると思っています。
(伝える時は、真剣な眼差しで本気であることが伝わるようにしましょう。)
ただし、詳細は後述しますが、最後まできちんと任せきることが大切です。
途中で手や口を出してしまうと、「任せられている」という意識が徐々に無くなっていきます。
(人によっては任せられたという意識だけではなく、やる気まで無くなります。)
反面、もし「任せる」と伝えた時に、任せられた本人が不安そうな顔をしたり、任せる上司も不安だなと思うのであれば、お互いに「任せる」の定義を決めると良いと思います。
例)「○○は任せた。もし△△に関しては不安であれば相談してくれ。やっていく中でやれると思えれば△△もお願いするし、厳しければそこは俺が拾うよ。」など
また、特に新人・若手の場合はスケジュール感覚(いつまでに、なにが、どのくらい終わっていないといけないのか)が掴めていないと思いますので、〆切りまで任せっきりにしておいた結果、〆切り当日に蓋を開けてビックリ、全然終わってないなんてことになりかねません。
そのため、そういったケースにおいては、お互いに話し合ってチェックポイントを設けた方が良いと思います。
例)「いつまでに何をする予定?」「○日までに△をする予定です。」「では、まずは○日後に△を見せてほしい。」
ちなみに、上記の例のようなやりとりをしていた時に、経験上「△を○日までだと間に合わない可能性が高いのでは」と思ったとしても、心の中にグっとしまい、スケジュール上やタスク(納品物)上、失敗しても取り戻せる内容なのであれば、「失敗を経験させること」も含めて丸っと任せてみた方が良いと思います。
自分で経験した失敗というのは忘れないものですし、失敗したことから来る悔しさが一番の成長の糧になります。
そして、上司としてすべき仕事は、失敗しても取り戻せるスケジュール(バッファ)を作ったり、失敗しても取り戻せる機会(タスク・仕事・納品物)を準備することではないでしょうか。
③任せるという絶妙なバランスを維持すること
・任せ過ぎると「放置・放任」になりますし、
・手を出し過ぎると「過保護」になります。
そのため、「任せる」ということは、
放置・放任 < 任せる < 過保護
というように、絶妙なバランスを維持する必要があります。
(放置・放任はしないけど、あまり手・口も出しすぎない)
それって結局どの程度なの?ということになると思いますが、
「任せる」ことは言い換えれば「見守る」こと
とイメージすると良いかもしれません。
四苦八苦、自分で考えて試すことが人材育成(人の成長)にとって最も大切だと思います。
そのため、当人が自分なりに頑張っている間は、どんなに口や手を差し出したくても、ギリギリまでグっと堪えることが大切です。
ただ、ずっと1人でやっていると疲弊していきますので、口や手を差し出す場として定期的に話しかけてあげてましょう。「進み具合はどうだ?何か悩んでいることはないか?」など。
そこで本人が初めて「○○がうまくいかない」「□□でコツを教えてほしい」などを言ってきた時に、(必要だと思ったら)手を添えるイメージで助け舟を出してあげること。
それが「任せる」=「見守る」ということだと思っています。
「任せる」ことで「当事者意識」が生まれ、「当事者意識」を持って取り組むことで「主体性」に変わり、最後までやりきることで(またやりきろうとすることで)「責任感」に変わる。
こういったプロセスで人は育ち、これがつまるところの人材育成になるのかなと自分は考えています。
ちなみに、「やる気がないから任せれない。」って話を聞くことがあります。
もちろん、そのケースもあると思いますが、「任せる姿勢がないから、やる気が失われていったのでは。」という、上司としては「もしかして」というこういった1%の疑問を持つ目線や自責思考の考え方は必要だと思います。
「できてないのは相手が悪い」と100%相手のせいにした場合ってのは大抵何も解決しませんから。
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「任せること」と「守・破・離」
ちなみに、「任せる」ためのステップとして日本古来の伝統芸の教え方の「守・破・離」(しゅはり)が部下育成にもあてはまるということが日経の記事にも書かれていました。
「守」とは「お手本をなぞりながら言われた通りにやる」というものだ。習い事はまずはここから始めさせなければならない。
そして、次に「破」。部分的にお手本から外れたアドリブを加える。
最後には「離」。お手本から大きく離れ、独自の世界へとはばたいて行く。
人によってはそのレベルが変わるとは思うので、そこは任せる人の特性を見極めてにはなるでしょうけど。
任せられる側の目線として
あと、任せられた人として必要な目線に関しての記事もありました。
あなたの会社では、部長が課長の、課長がメンバーの仕事をしていませんか? ~自身と会社が成長するために欠かせない「1つ上の視点」~
トヨタの指導指針である「2つ上の目線」はいいですね。
尊敬する上司がいる人の場合「あの人だったらこの場合、どういう判断するだろうか」ってのやったことあると思いますが、あれに近しいところはありますね。
任せるための手法
仕事を任せるための手法として参考になった記事を「人材育成:当事者意識・主体性・責任感の育て方 ~仕事の任せ方(参考記事まとめ)~にまとめましたので、興味のある方は参考まで。